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2020/03/03(水) 配信
ものづくりを行う製造業において、重要な部門のひとつが「生産技術」ですが、生産技術がどのような役割をもち、どのような業務を行っているかはあまり知られていません。非常に高い技術が求められるイメージがある一方で、文系や異業種から転職する人も比較的多い職場です。本記事では、生産技術の具体的な仕事内容や、生産技術に向いている人など、生産技術職に関する情報を紹介します。
生産技術職は、企業におけるものづくりの根幹を支える大事な役割を果たす職種です。生産技術が担当する仕事の内容や、仕事をする上で押さえておきたいポイント、仕事の魅力などについて紹介します。
生産技術とは?
「生産技術」とは、企業の工場や生産現場において、生産ラインの設計や管理を行う仕事です。生産ラインは、原料や材料から目的となる製品を製造する一連の流れのことで、例えば木材を作る生産ラインなら、原木のカット、はつり作業、乾燥、品質検査、品質によるランク分け、といった一連の流れ全体を意味します。これらを管理することによって、低コストで、短納期、高品質な生産体制を構築することが生産技術の大切な仕事です。
生産技術の仕事は、生産ラインの設計や管理だけではありません。理想とする生産ラインに必要な設備が不足している場合、その開発に取り組むこともあります。また、予算の確保や設備の導入順をめぐって、関係各所の調整を行ったり、上司や経営陣に対して現場の状況を報告したりすることも多いです。現場で扱うさまざまな技術への理解はもちろん必要ですが、マネジメントに関するスキルも求められるため、文系出身でありながら生産技術の職についている人も多くいます。
効率的な生産体制の設計と構築
生産技術という仕事において、特に意識すべき、重要なポイントがいくつかあります。その1つが、「生産性の高い、効率的な生産ラインの設計」です。生産性には「資本生産性」と「労働生産性」があり、生産技術ではこれらの数字を意識しながら効率的な生産ラインを作っていきます。
資本生産性は、工場の設備からどれだけの製品を生産できたかの指標で、労働生産性は工場の人員の労働効率を表す指標です。資本生産性が高ければ、設備の効果が高いことを意味し、労働生産性が高ければ、少ない労働者で多くの生産活動を行っていることを意味します。生産技術の仕事は、これらの生産性の向上に向けて、使う設備の研究や見直し、業務手順や環境、働き方の見直しなどを行うことです。こうした生産性指標を使いこなし、現場の効率化につなげるには、管理会計の知識もあると役立つでしょう。
現状の生産体制の課題発見と解決
生産技術の仕事の目的は、生産現場の生産性向上です。目的の実現のためには、現状の生産体制を分析し、課題を発見して改善・解決していくことが必要です。課題発見や課題の解決のためには、資本生産性と労働生産性を定期的に測定し、記録することが欠かせません。そして、記録された情報をもとに多角的に分析を行い、生産ラインの状況や問題点を発見し、改善策を実施するといった業務を早いサイクルで行うことが求められます。
生産技術はこうした業務プロセスの中で、問題解決のために仮説を立て、検証を行う役割も担うことが多いです。また、人員の異動や増減といった季節的な変動要因への対応も都度求められます。生産性改善のために有効な手法やアイデアを発見した場合、社内に提案し、現場に浸透させることも生産技術の重要な仕事です。生産技術は、時々刻々と変化する環境に対応するために中心となって働く「生産現場の司令塔」であるといえるでしょう。
新たな生産技術の開発と導入
生産技術の仕事では、現状の課題に対する取り組みだけでなく、新たな生産技術のリサーチや導入提案も求められます。生産性の改善に有効な新技術が発見された場合、それをいち早く導入することができれば業界内で優位に立つことも可能です。1人の発見・提案が、組織の生産活動や競争優位を作り出すことも多いため、技術的な知見や提案力を持つ技術者は現場でも高く評価されます。
生産技術は、現場で活用する技術を選択・決定する役割を担うため、専門的な技術知識を求められることが多いです。しかし、それと同時に現場の状況をしっかりヒアリングすることも大切で、多くの企業では生産技術は複数人のメンバーで役割を分担しながら行っています。そのため、全員が技術のスペシャリストとは限らず、新人や未経験者がメンバーに入っていることも多いです。
設備の導入や設置
生産設備の仕事では、設備の導入や設置についての計画・提案を行う機会も少なくありません。設備の導入には大きなコストがかかりますが、その妥当性を根拠立てて説明できることが生産技術の担当者には求められます。導入検討時には、新しい設備の導入によって、どれだけの生産性改善が見込めるのか、その結果、どのくらいの期間でコスト回収が可能なのかを試算することが必要です。
最終的な決定権は経営陣にありますが、設備の導入や設置において、生産技術は大きな権限をもっている職種であることは間違いありません。生産技術のチームが優秀であれば、新しい設備が現場に導入される機会も増え、現場の生産性が向上し、売上はもちろん労働環境もよくなっていきます。現場だけでなく企業経営に大きな影響を与える設備の導入や設置だからこそ、知識と判断力はもちろん、現場の状況に関する正しい理解が大切です。
生産技術の魅力とは
生産技術の仕事は、生産の現場で働く従業員と、企業を経営する経営陣の中間に位置する仕事といえます。実際に現場を見て回り、技術や環境の問題などを肌で感じつつ、経営者と同様に数字によって分析・管理を行うからです。現場の声を経営陣に届けるためには、常に現場と一体感をもって生産活動を行うことが求められます。一方で、経営陣と同様に、数値資料などから課題を見つけ出し、その解決を行いながら事業の生産性を高めるという経営的な視点も必要です。
こうした現場と経営の両方の視点を意識する仕事だからこそ、生産現場の専門知識とともに、経営視点も身につけることができます。実際、生産技術の現場で長く務めた人が工場長やCTOなどの管理職、役員に出世するケースも少なくありません。技術とビジネスの両面に強い人材は、さまざまな業種で活躍が期待できるため、ビジネスパーソンとして成長したい人にも生産技術は魅力的な仕事です。
生産技術の仕事は、技術も経営的な観点も必要になるため、むずかしいと感じる人もいます。生産技術の仕事にはいくつかのコツがあり、事前に知っておくとスムーズな仕事が可能です。以下では、生産技術の仕事のポイントを紹介します。
製造現場の声を拾い上げる
生産技術の仕事を行う上で最も大事なことは、「現場の声に耳を傾けること」です。生産に関する課題の多くは生産現場において発生しています。そのため、現場で働く社員からヒアリングして集めた情報は、数字に出てこない課題を見つけ、複数の課題から最も重要な課題を特定するための有力な手がかりです。
たとえば、「作業で扱うことになった原料が作業服につくと異臭がする」「最近、ある部品の製造のときだけ機械から異音がする」といった情報は、生産の数値にはさほど影響しないかもしれません。しかし、従業員や工場における安全確保などの観点からは早急に確認し改善にあたるべき課題です。システムによって収集・計測される数値資料だけでなく、現場でしかわからないことにしっかり耳を傾けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、生産技術は経営陣に対して現場の状況を報告しますが、数字だけではなく、労働環境や仕事のペースに関することなど、現場の声を伝えることも大切です。経営陣に現場の声を正しく伝えることで、経営と現場の架け橋となり、風通しのよい組織を作る役割も担っています。
新たな設備や技術と現状のギャップを組み合わせる
生産技術が担う生産性向上のためには、新たな設備や技術導入が必要なことも多いです。新しい設備や技術導入は魅力的ですが、導入においてはしっかりとした判断基準が求められます。ここでは、技術視点よりも経営視点が重要です。導入の際は、現在、現場に存在する課題を特定し、理想的な状態との間に存在するギャップを埋めるような設備や技術を導入しなければなりません。
単純な性能アップや流行のキャッチアップのためだけに設備投資をするのは、多くのケースでコストが高くついてしまいます。現場で起きている問題を正確に把握し、その改善のために適切な設備や技術を選ぶ意識と、判断のための知識が必要です。生産技術では、新たな設備や技術にいつも関心を持ち、情報に触れたときには自分の現場に適用できないかを考えるようにするとよいでしょう。
生産技術は技術と経営の両面をもつ特殊な仕事であるため、その仕事に向いたパーソナリティーを持つ人材が求められます。生産技術の仕事に向いた性格や特徴にはどのようなものがあるのか見てみましょう。
コミュニケーション能力が高い
生産技術は、生産に関わる多くの部署と関わりながら業務を行う仕事です。関わる人は一般の従業員から現場長、社内の部長レベルや役員など、年齢や役職も幅広くなります。そのため、さまざまな人と支障なく、また正確にコミュニケーションができる能力は生産技術では必要不可欠です。
特に生産技術では、異なる意見を持っている人の間での意見調整に苦労する場合も多いです。こうした状況で、うまく立ち回らなければ、必要な情報が得られなかったり、その後の仕事にも悪影響が生じたりすることもあります。また、いろいろな人からの正直な意見を吸い上げるためには、普段からの関係づくりや、信頼を得られるような接し方、振る舞いと実績などが重要です。単なるおしゃべり上手ではなく、ビジネスにおけるコミュニケーション能力を磨くことでよい仕事ができるようになります。生産技術を目指したい人は、コミュニケーション能力を意識して訓練しておくとよいでしょう。
柔軟な発想力がある
生産の現場では、予想外のハプニングも度々発生します。「納入される予定だった原料が遅延している」「作業中に機械が故障した」といった不測の事態が生じた場合でも、生産技術は現場の生産をリードしていかなければなりません。そのためには「分割納品を提案する」「他工場のラインでの生産を行う」など、ビジネス上の目的を達成することを意識し、自分の現場や担当部署、既存のマニュアルや経験則などにとらわれない、柔軟な発想力が問われます。いかなる状況でも、多面的に課題を捉え、現場の課題に対する解決策を柔軟に提案できれば、危機を乗り越えるたびに現場の信頼と、経営陣からの高い評価を得られるでしょう。
こうした特徴のある仕事であるため、柔軟な発想力のある人は、生産技術で力を発揮できる可能性があります。アイデアマンで、問題解決力の高い人なら生産技術向きといえるでしょう。また、さまざまな選択肢を考え出すことができるだけでなく、その選択肢から最適なものを選ぶことができる判断力があればより活躍が期待できます。柔軟な発想力を活かすために、併せて判断力にも磨きをかけておきましょう。
経営視点・現場視点でものごとを客観的に見れる
生産技術の仕事は、現場の声を聞くだけでなく、それを経営視点で見つめながら課題として抽出し、解決にあたることが求められます。そのため、現場と経営の両方からの視点で物事を客観的に見ることができる人は生産技術への適性が高い人です。生産技術では、現場と経営のどちらにも偏ることなく、客観的に物事を判断するバランス感覚が要求されます。そのため、普段から流行や周囲の意見に流されず、客観的に物事を判断できる人が、生産技術の仕事と相性のよい人です。
生産技術は客観的で中立的な立場をとるがゆえに、時にはむずかしい舵取りを迫られる場面もあります。しかし、現場と経営の両方の視点から物事をしっかり考えていれば、それほど困ることはありません。普段からしっかり考える中で、判断や提案に根拠と自信を持つことができるからです。生産技術のみならず、ビジネスにおいて客観性や根拠に基づく主張ができることは強い武器になりますので、ビジネスパーソンとして成長するためにも、普段から意識的に磨いておくとよいでしょう。
生産技術は、現場と経営の両方の視点から、課題発見を行い、その改善や解決を推進していく仕事です。生産技術の仕事に携わることで、生産ラインだけではなく、企業の経営なども俯瞰できる高い視点が身につきます。ビジネスパーソンとして成長したいと考えている人は、ぜひ生産技術の仕事を探し、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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