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溶接の仕事とは?
作業手順や注意点などの基礎知識

2020/03/02(月) 配信

溶接の仕事とは?作業手順や注意点などの基礎知識

 溶接の仕事というと、遮光マスクをつけて火花を飛び散らせながら金属の部品を接合しているイメージをもつ人が多いでしょう。しかし、実は溶接にもさまざまな種類があります。作業の内容によっては危険もあるため、仕事をするにあたっては注意すべき点も多いです。溶接の仕事に興味があるなら、まずは種類や注意点について知っておくと良いでしょう。ここでは、溶接の種類や作業の手順、注意点、資格など基本的な知識を説明します。

溶接の仕事とは

溶接の仕事とは

 溶接とは、2つの金属部品を電気やガスの熱を加えて溶かし接合することです。製造業においては欠かせない作業で、広く行われています。この接合の技術を使いながら機械部品などを製造・加工していくのが、溶接の仕事です。金属部品を上手に接合するには高いスキルが必要で、そのためには経験を重ね、技術を磨くことが求められます。スキルが高くなるほどサイズが大きな部品の作業もできるようになります。センスや熟練度が重視される仕事のため、幅広い年齢層の人が活躍しているのが特徴といえるでしょう。男女比では圧倒的に男性が多くなるものの、少数ながら女性の溶接工もいます。

溶接の方法は融接・圧接・ろう接

溶接の方法は融接・圧接・ろう接

 溶接は、主に「融接」「圧接」「ろう接」の3つに分類されます。それぞれの特徴を見てみましょう。

 【融接】
 溶接のなかでもっとも一般的な方法が融接です。材料の接合面に熱を加えて溶かし、接合します。融接の代表的なものがアーク放電を利用したアーク溶接です。そのほかにも、ガス溶接やレーザ溶接、電子ビーム溶接などの種類があります。

 【圧接】
 圧接は、材料の接合部にプレス機などで圧力を加えることで接合する方法です。熱を加えることはなく、溶かさずに接合します。摩擦圧接法やガス圧接法、抵抗スポット溶接などいくつかの種類があります。

 【ろう接】
 ろう接は、接合する材料(母材)よりも溶けだす温度が低い溶加剤(ろう)を溶融し、のりのように使って接合する方法です。母材に直接熱を加えることはせず、傷つけることなく溶接できます。

アーク溶接の作業手順

アーク溶接の作業手順

 先に述べたように、アーク溶接は一般的に行われている融接方法です。被膜アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接などいくつかの種類があり、母材にもっとも適した方法で溶接が行われます。ここでは、もっとも代表的な融接であるアーク溶接について、必要な道具と手順を紹介します。

 【アーク溶接に必要な道具】
 溶接は、ある程度危険を伴う作業です。事故を防止するためには、機械や道具をきちんと準備することが欠かせません。基本的には、次のような機械や道具が必要です。
 ・アーク溶接機:金属を溶かすため高温を発生させる機械
 ・アーク溶接棒:母材との間にアーク(電気)を発生させるために電極として使うもの
 ・遮光マスク(溶接マスク):目や皮膚を守るため、溶接時に発生する強い光や紫外線を遮断するマスク
 ・革の手袋
 ・エプロン等の防護服
 ・ハンマー:溶接のカスをたたき落とすもの


 【アーク溶接の手順】
 溶接するときは、まず鋼材を適切な長さに切断し、完成形をイメージして加工することが必要です。その後、溶接して母材を接合し、表面を磨き、最後にサビ止めを塗って完成です。ペンキなどで塗装することもあります。アーク溶接するときのおおまかな手順は、以下のとおりです。
 1.アーク溶接機に各ケーブルを接続してスイッチをいれる
 2.トーチ側ケーブルにセットした溶接棒で母材を軽く叩き、アークを発生させる
 3.溶接棒に触れた部分が均一に溶けていることを確認しながら接合部を溶融していく

危険が多い?溶接には安全教育が義務

危険が多い?溶接には安全教育が義務

 アーク溶接作業では強烈な光や熱、ガスなどが発生するため、何か不具合が起こると事故や災害につながる可能性が高いです。アーク溶接を行う際は注意すべき事柄が多く、知識や技術のない人間が行うことはできません。アーク溶接などの業務に係る特別教育を、学科11時間、実技10時間以上受講することが必要です。また、アーク溶接作業に従事する労働者には、特殊健康診断を受けることも義務づけられています。作業による災害を防止するため、多くの法律で溶接の安全衛生について定めています。

 たとえば、労働安全衛生法や労働安全衛生施行令、労働安全衛生法規則などです。労働衛生法では、アーク溶接に係る特別教育を受講する必要があると定められています。また、溶接中に発生するヒューム(細かい粒子)を吸い込むと肺の疾患を招くことがあり、防じん障害防止規則で適切な換気や防じんマスクの着用などが義務づけられています。これ以外にも、溶接工の健康と安全を守るため有機溶剤中毒予防規則や酸素欠乏症等防止規則、高気圧作業安全衛生規則、鉛中毒予防規則、じん肺法でさまざまな規定が定められているのです。

溶接の作業着で身を守る

溶接の作業着で身を守る

 安全作業を行うためには、作業服を整え安全保護具を適切に着用することが必要です。アーク溶接を行う際は、光や熱、飛散物、ヒュームなどが発生するため、しっかり防護できる格好をしていなければ非常に危険です。目や皮膚への障害やじん肺、感電事故などさまざまなトラブルが起きる可能性があります。強い光や飛散物から目や皮膚を保護するためには、遮光ガラス(フィルタ-プレ-ト)がついた溶接マスクの着用が欠かせません。

 直接溶接作業はしないもののアークが発生する環境で作業するというケースでは、溶接マスクは着用しなくても良いでしょう。ただし、散乱光から目を守るのに保護メガネが必要です。横から飛散物が入るのを防ぐため、サイドシールドがついたものが望ましいでしょう。ヒュームやガスを吸い込むと肺の病気になる恐れがあるため、防じんマスクも着用します。火花が飛び散るため、手袋やエプロン、腕カバーや脚カバーも身につけましょう。素材は化学繊維や木綿などではなく、燃えにくい革製のものにすることが大切です。

 手袋はアーク溶接用を着用します。3本指タイプや5本指タイプ、丈の長いものや短いものなどさまざまな種類があるため、いろいろ試して使いやすいものを選ぶと良いでしょう。腕の火傷やアーク光の紫外線による日焼けを防ぐため、ロングタイプ(全長35cm程度のもの)が適しています。

溶接作業で注意すること

溶接作業で注意すること

 溶接作業はモノづくりの要であり、大変やりがいのある仕事です。しかし、繰り返しになりますが、作業には危険が伴うことも否定できません。安全に溶接するためには、注意すべき事柄がたくさんあります。どのような危険があるのか、どのようなことを注意すべきかについて詳しく見ていきましょう。

赤外線、紫外線による目や皮膚の障害
 アーク溶接の際、熱源からは紫外線や赤外線が放出されます。そのため、光を保護メガネやフィルタープレートなしに直視してはいけません。なぜなら、目に入ることで目の奥に炎症を起こすからです。特に、紫外線は急性電気性眼炎を起こす恐れがあります。症状は光を直視してもすぐには現れません。数時間経ってから、ごろごろとした異物感を覚え、目を開けていられなくなります。しばらくすると自然に回復するものの、炎症を繰り返すようであれば目に障害が起きてしまうでしょう。また、紫外線は皮膚にやけどのような炎症を起こし、赤外線を長い時間見つめていると白内障を引き起こします。

 「短時間だけだから」などと考えず、必ずハンドシールドやヘルメット、保護メガネの着用を実施しましょう。また、火傷や炎症は高温になったスパッタ(飛散物)でも生じます。そのため、革製か難燃性布の保護具で、露出した部位のないよう全身を確実に保護することが大切です。



ヒュームによるじん肺

ヒュームによるじん肺
 作業中に発生するのは、熱や光だけではありません。スパッタやガスのほか、ヒュームも発生します。ヒュームとは、細かな金属の粒子のことです。溶接する際の熱によって金属が溶けて蒸発したあと、空気中で冷却されることで粒子になります。溶接作業中はヒュームが数多くあたりを漂っていて、大量に吸い込んでしまうと中毒症に、長期間肺に溜まるとじん肺になる恐れがあるのです。金属中毒を起こすと、発熱や頭痛が起こったり筋肉痛や脱力感などが現れたりします。じん肺は呼吸器に異常が起こる疾患です。溶接作業者は防じんマスクを必ず着用する必要があります。また、定期的に健康診断を受けることも大事です。



感電(電撃)の事故

感電(電撃)の事故
 アーク溶接機には直流溶接機と交流溶接機があります。被膜アーク溶接棒を使って交流アーク溶接作業を行っていると、作業を中断しているときでも無負荷電圧は出力状態にあります。うっかり触ると電流が身体に流れ感電する恐れがあるため、作業を始める前に溶接機の電源やスイッチの位置を確認することが大切です。作業が終了したらすぐに溶接機の電源を切ることも忘れてはいけません。濡れた手袋や素手の状態で電源や溶接機のスイッチ、溶接棒ホルダなど電気機器の導電部を触ることも厳禁です。もちろん、溶接トーチや溶接用ケーブルなどにも触れないようにしましょう。

 感電すると、皮膚の痛みや発熱、炎症、筋肉の激しい痛みなどが生じる恐れがあります。最悪の場合命にかかわることもあるため、細心の注意が必要です。



ガス欠、ガス漏れ、火災、爆発

ガス欠、ガス漏れ、火災、爆発
 溶接作業では、高温のアークのほか、スラグ(金属カス)やスパッタが発生します。これらが可燃物に接触すると、引火して火災や爆発につながることがあり、注意が必要です。そのため、作業するときは周りに注意して、燃えやすい布やボンベなど少しでも危険性のあるものは置かないように気をつけましょう。こまめな整理整頓を心がけ、実施することも大切です。引火などの危険性があるものの、大きさやスペースの関係で移動するのが難しいというものがあれば、高い難燃性のあるシートで上から覆って保護しましょう。

 また、高圧ガス容器(ボンベ)を正しく取り扱わなければ、ガスが噴出したり容器が爆発したりして大きな事故に結びつくことがあります。慎重に正しい手順で取り扱うことが大切です。なお、ガス溶接装置を使用するときは、所定の資格を取得していることを示す書面を携帯する必要があります。該当するのは、ガス溶接作業主任者免許証かガス溶接技能講習修了証のいずれかです。このほか、狭い場所や密閉された場所でシールドガスを用いるガスアーク溶接を行うと、酸素欠乏症になる危険性があります。換気をこまめに行うなど注意して作業しましょう。

 万が一火災が起こったときに迅速に対応できるよう、消化器や消火栓、消火用水などの消火設備がどこに設置されているかを確認しておくことが大切です。

アーク溶接の資格

アーク溶接の資格

 溶接にはさまざまな資格があります。知識や技術を確かめ、担当できる業務の幅を広げるため取得を目指すといいでしょう。

【溶接の資格】
・ガス溶接技能者:ガスを用いた溶接を行う知識・技術を認定する資格です。講習を受け、修了時に試験を受けて合格すれば資格が取得できます。
・ガス溶接作業主任者:アセチレン溶接やガス溶接、切断、加熱の作業を行う際に指導できる知識や技能があることを証明する資格です。試験を受け、合格基準に達していれば取得できます。
・アーク溶接作業者:アーク溶接特別教育講習を受講したことを示す資格です。学科と実技の講習を受けて試験に合格すれば取得できます。
・アルミニウム溶接技能者:アルミニウムのティグ溶接・ミグ溶接の知識・技能があることを認定する資格です。基本級と専門級があります。学科と実技の試験を受け、合格基準に達すると取得できます。
・PC工法溶接技能者:プレハブ建築の溶接作業に関わる知識・技術を認定する資格です。講習を受け試験に合格すれば取得できます。
・ボイラー溶接士:溶接によってボイラーの製造や改造、修理を行う知識や技能があることを認定する資格です。普通ボイラー技士と特別ボイラー技士があります。学科と実技の試験に合格すれば取得できます。
・溶接管理技術者:溶接技術に関する知識と技術、施行や管理に関する職務能力があることを認定する資格です。特別級、1級、2級があります。学科試験と口述試験を受け合格すると取得できます。
・溶接作業指導者:溶接の作業において、溶接作業者を指揮・監督したり指導したりできる知識と技術があることを認定する資格です。講習を受け、試験に合格すると取得できます。


【アーク溶接作業者】
アーク溶接作業者は国家資格で、「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を受講すれば取得でき、合格率はほぼ100%といわれています。満18歳以上であれば、誰でも受講可能です。講習は2日間(11時間)の学科と1日(10時間)の実技に分かれます。溶接にはさまざまな資格がありますが、はじめて受ける人は年齢以外の受験条件がなく合格率の高いアーク溶接作業者を取得すると良いでしょう。一度取得すれば一生有効となります。この資格があれば、自動車メーカーや修理工場、建設業、工場など幅広い職場で活躍できます。経験を積んだら、専門性のより高い溶接関連の資格に挑戦し、キャリアアップを目指すと良いでしょう。

溶接の仕事を探そう

溶接の仕事を探そう

 溶接のなかでもっとも一般的なアーク溶接を中心に説明してきました。高温の熱を使用するため危険が伴い、注意すべき点もたくさんあります。しかし、多くの法律で安全を守るよう定められていて、各種の防護服もあります。しっかり対策すれば溶接の仕事を怖がることはありません。経験を積んでスキルを磨けばキャリアアップが望める仕事です。溶接の仕事に挑戦したくなったら、さっそく求人を探してみましょう。

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