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2019/10/03(木) 配信
アーク溶接は溶接方法のひとつですが、さまざまな分野で幅広く利用され、金属加工をおこなう業種では必須といえる作業です。アーク溶接の仕事に興味がある人のなかには、どのような作業内容なのか詳しく知りたい人もいるでしょう。この記事ではアーク溶接の作業内容とメカニズム、メリットとデメリット、アーク溶接作業に必要な資格や活用できる仕事などを紹介します。
そもそもアーク溶接とはどのような仕事なのでしょうか。ここではアーク溶接の作業内容とアーク溶接のメカニズムについて説明します。
アーク溶接の作業内容
溶接とは金属と金属を熱や圧力を加えて接合する作業のことです。アーク溶接は溶接のなかで最も一般的な方法で、自動車や建造物、家庭で利用する金属製品など、多種多様な分野で広く使われている溶接方法です。電流が空気中で放電現象(アーク放電)を起こすことを利用して、金属同士をつなぎ合わせることからアーク溶接と呼ばれています。アーク溶接作業ではアーク溶接機につないだ溶接棒(または溶接ワイヤ)を電極として使用します。この電極と金属の接合部分に高熱なアーク放電を発生させ、その熱で金属や溶接棒を溶かしながら接合をおこないます。
アーク溶接にもさまざまな方式がありますが、大きく分けると、溶接時に溶接棒が溶ける消耗電極式と、溶接棒が溶けない非消耗電極式の2種類に分類することができます。消耗電極式には、被覆アーク溶接、マグ溶接、ミグ溶接、エレクトロガスアーク溶接があり、非消耗電極式には、ティグ溶接、プラズマ溶接といった溶接方法があります。
また、上記2種類の他にもガスシールドアーク溶接と呼ばれる分類もあります。マグ溶接、ミグ溶接、ティグ溶接がこれにあたります。溶接部にシールドガスを噴射することによって、高温になった金属が酸素と反応して酸化するのを防ぐ方式です。シールドガスを使用するので人が作業するには換気が必要となるため、自動化が進められています。
アーク溶接のメカニズムを知ろう
アーク溶接ではアーク放電という電気現象を利用して溶接をおこないます。アーク放電とはプラスとマイナスの電極間の電位差によって空気中に電子が放出され、電流とともに強い弧状の光(アーク)と高熱が発生する現象です。溶接作業をするときはアーク溶接機の2つのケーブルに、それぞれ溶接棒と、接合したい金属(母材)をつなぎます。溶解棒と母材の2つの電極に電圧をかけて近づけていくと(軽く接触させる)、溶接棒と母材の間にアーク放電が発生します。その高熱を利用して金属の接合部分を溶かし接合していきます。
溶接棒にプラスの電圧、母材にマイナスの電圧をかけると、母材から溶接棒へアーク放電が発生します。アーク放電の出力電流は5~1000アンペア、出力電圧は8~40ボルト程度ですが、温度は5000~2万度という高温に達します。鉄の融解温度は約1500度なので、鉄を溶かすには十分な温度になります。この高熱によって母材や溶解棒が溶かされて接合されるというメカニズムになっています。アーク放電自体は不安定な電気現象ですが、アーク溶接機が安定したアークを発生させることによってアーク溶接を可能にしています。
アーク溶接が幅広く利用されているのはメリットが多いからですが、デメリットも存在します。ここではアーク溶接作業の主なメリットとデメリットを説明します。
アーク溶接作業のメリットとは
まずはアーク溶接作業のメリットを説明します。主なメリットは以下の5点です。
・比較的に安価で高品質
溶接作業に必要なアーク溶接機の本体は、比較的に安価で高品質なものが多くあります。規模の小さな工場でも複数台を所有して、同時に稼働させることで作業の効率化を図ることができます。
・ホームセンターでも入手可能
アーク溶接に必要な器具はホームセンターなどでも入手可能です。個人で気軽に購入することができるので、日曜大工などでの利用も広まっています。
・構造がシンプルなためメンテナンスが容易
アーク溶接に必要な器具は、構造がシンプルなため使いやすくて保守や点検も容易です。
・ガスを使わない方法もあり危険性が低い
アーク溶接作業にはシールドガスを噴射する方式がありますが、ガスを使わない方式もあります。ガスを使わない方式であれば、ガス中毒になったり、ガスへの引火事故が発生したりする危険性は低くなります。ただし、溶接棒を覆う被覆剤はアークの高温によって溶ける際にガス化します。
・屋外で作業可能
シールドガスを使わない方式であれば、風によりシールドガスが拡散する心配がないので、屋外で安全に溶接作業をおこなうことが可能です。
アーク溶接作業のデメリットとは
次にアーク溶接作業のデメリットを説明します。アーク溶接で最も一般的な方法が、心線を被覆剤で覆った溶接棒を使用する被覆アーク溶接ですが、主なデメリットは以下の4点です。
・被覆剤が焼損する可能性がある
被覆アーク溶接では、溶接棒に大きな電流を流した場合に、溶接棒を覆う被覆剤が焼損する可能性があります。
・溶ける速度が遅く時間がかかる
溶接棒の被覆剤が焼損する恐れがあるため、使用できる電流が小さくなります。その分、金属が溶ける速度も遅くなってしまい、溶接に時間がかかるというデメリットがあります。
・溶接棒の操作が難しい
被覆アーク溶接では溶接の進行とともに、溶接棒が溶けて短くなっていきます。そのため、溶接棒の長さに合わせて位置を調整する(接合したい部分に近づけていく)操作が必要になりますが、慣れていないとスムーズな操作は難しいです。
・作業者によって仕上がりに差がでる
溶接自体は簡単におこなえますが、作業者の技術や習熟度によって、溶接の後の仕上がり具合に大きな差がでてしまいます。
ここではアーク溶接をおこなうために必要な器具と、作業方法、注意事項などを説明します。
アーク溶接に必要な器具
アーク溶接に必要な主な器具について説明します。電流を扱う作業になるので、しっかりとした準備と器具のメンテナンスも必要となります。
・アーク溶接機
アーク放電を発生させるための小型発電機のような装置です。不安定なアーク放電を安定して発生、維持させる機能を持ち、溶接方法によってさまざまな種類があります。アーク溶接では最も重要な装置なのでメンテナンスも大切です。
・溶接棒
溶接する母材と同じ材質の心線に、被覆剤を塗り固めた棒状の器具です。アーク溶接機につなぎ電流を流す際に電極の役割をはたします。
・遮光マスク
溶接作業をするときに発生する強い光や、火花から目や顔を守るために使用します。
・革の手袋、エプロン等の防護服
溶接時には火花が飛び散る可能性があります。火花から手を守るためと、火花が衣服に燃え移らないようにするために、熱に強い革製の手袋やエプロンなどを身に付ける必要があります。防護服があれば、なお良いでしょう。
・ハンマー
溶接のカスをたたき落とすために使用します。
アーク溶接の方法
アーク溶接をおこなう方法は次のような手順となります。
1.アーク溶接機の2つのケーブルに、溶接棒と接合したい金属(母材)をそれぞれつなぎます。
2.アーク溶接機の電源を入れて電圧を上げていきます。
3.溶接棒も持ち、接合したい金属部分に当てて数回たたきます。
4.溶接棒と母材の間に電流が流れてアーク放電が発生します。
5.アーク放電の熱によって、母材や溶解棒を溶かしながら接合していきます。
うまく溶接するコツは、溶解棒と接合したい金属の間に適切な距離を保つことです。溶解棒は接合面に付けず、離れ過ぎず一定の距離(3~5mm)を維持し、接合面に斜めに滑らせるように操作します。溶接がうまくいけば、貝殻の模様のような溶接痕(よううせつこん)ができるはずです。
以上のような手順でアーク溶接作業をおこないます。適切に溶接ができれば、高い強度で金属同士を接合することができます。溶接時には強い光と火花が発生するので、遮光マスクを使用して目を守り、火花から身を守るために革製の手袋や防護服も身に付ける必要があります。
アーク溶接をするときに注意したいこと
アーク溶接作業は電流を扱い、高温の火花が飛び散る危険な作業です。準備をしっかりとしておくことが重要です。アーク溶接作業で特に注意したいことを以下にあげておきましょう。
・溶接方法に適した溶接機を使用する
アーク溶接には一般的な被覆アーク溶接の他にもさまざま方法があり、それぞれに適した溶接機があります。作業の安全と効率化のために、溶接方法にあった装置を使用することが大前提となります。
・遮光マスクを必ず装着する
アーク溶接では強い光や火花が発生します。目や顔を保護するために遮光マスクは必須です。溶接作業をおこなうときには必ず、遮光マスクを装着していることを確認します。
・サングラスの着用を徹底する
溶接時に遮光マスクを付けることは必須ですが、それ以外の工程でも溶接の際に発生した金属片が目に入る危険性があります。すべての作業工程で金属片の飛び散りから目を守るために、サングラスを着用することを徹底しましょう。
・作業場所の十分な換気
溶接時には高温で蒸発した金属や、ガス化したフラックス(溶解棒の被覆剤)が大気中で冷却され、ヒュームという人体に有害な粉塵を発生させることがあります。屋内で溶接作業をおこなう際には十分な換気が必要です。
・消耗品は多めに準備しておく
アーク溶接に使用する溶加材や溶解棒は消耗品です。溶接作業の途中でなくなると作業が中断してしまいます。作業効率を良くするには消耗品を切らさないことが大切です。
アーク溶接には資格が必要となりますが、簡単に短期間で取得することができます。ここではアーク溶接に必要な資格と費用や日数について紹介します。
アーク溶接資格?
アーク溶接作業には専門性と危険性があるため、業務としておこなう場合にはアーク溶接の資格を取得することが必要不可欠です。しかし、資格といっても難しいテストはありません。アーク溶接特別教育講習を受講して修了証を取得すれば、アーク溶接作業者として業務に就くことが認められます。講習をしっかりと受講するだけで資格を取得できるので、事前に勉強する必要もありません。合格のハードルが低い資格と言えるでしょう。
アーク溶接特別教育講習は技術系の専門学校や社団法人がおこなっており、各都道府県に受講センターや会場が設置されています。18歳以上であれば誰でも受講することができます。学科講習に続き、実技講習を受けることにより、終了証を取得できるようになります。学科講習ではアーク溶接関連の基礎知識と関係法令などを学びます。実技講習では指導を受けながら、実際に溶接作業を実施します。講習会場によっては受講後に簡単な実技試験や、確認程度のテストが設けられていることもありますが、難しいものではありません。学科講習、実技講習の内容をしっかりと理解していれば問題なく合格できるレベルです。アーク溶接作業者の資格には期限というものがありません。一度取得してしまえば、更新する必要がないので一生使える資格です。
資格取得にかかる費用や日数など
アーク溶接の特別教育講習にかかる費用は、テキスト代を含めて学科のみだと11,000円(税込み)前後、学科+実技だと25,000円(税込み)前後です。講習にかかる時間は学科講習が11時間、実技講習が10時間以上で合計21時間ほどの講習を受講することで修了となります。講習にかかる日数は学科講習のみであれば1日半です。実技講習を含めると3日間で講習が完了します。学科講習の内容は3つの基礎知識(アーク溶接等に関する知識、アーク溶接装置に関する基礎知識、アーク溶接等の作業方法に関する基礎知識)と、関係法令について学びます。実技講習は1日半でアーク溶接機器の取り扱いや、溶接技術、作業方法を実習します。
アーク溶接は最も一般的な溶接技術ですが、多くの金属を溶接することができるので、いろいろな金属製品や金属建造物に使用されています。たとえば、オフィス用品(机や椅子)、自動車の部品、鉄道の車両、船舶、航空機などがあげられます。金属加工を扱う業務には必須の技術といっていいでしょう。この技術を身に付けておけば、仕事の幅を大きく広げることができます。金属を扱う企業や工場に就職する際にも有利です。アーク溶接資格を活用できる仕事には以下のようなものがあげられます。
・自動車メーカー、修理工場
・造船業
・建設業
・その他鉄工所、加工業など
上記の業種に限らず、金属加工をおこなっている企業や工場で即戦力として活躍することができるでしょう。アーク溶接をスタートとして、その他の溶接技術を身に付けることで、プロの溶接工としてステップアップすることも可能です。
溶接の仕事は資格の取得が難しいという印象があるかもしれません。しかし、アーク溶接の資格は比較的に簡単で、短期間で取得することが可能です。一度取得してしまえば更新する必要もなく一生役に立つ資格です。アーク溶接は専門性が高く、さまざまな職場で活用することができるので仕事の幅も広がります。アーク溶接の資格を取得して、アーク溶接の仕事を始めてみてはいかがでしょうか。
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