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2019/08/06(火) 配信
いわゆる「危険物」とされているものを取り扱う現場は、世の中に意外とあります。身近なところでは、ガソリンや灯油を扱うガソリンスタンドもその一つでしょう。この記事では、そんな危険物を取り扱う現場で働くために必要な「危険物取扱者資格」についての解説をはじめ、資格取得者の転職事情についても紹介していきます。
そもそも、「危険物」とはどんなものを指すのでしょうか。総務省消防庁によれば、消防法によって危険物に分類されているものには、大きく以下の3つの性質があります。1つ目は、「火災発生の危険性が高いもの」、2つ目は「火災拡大の危険性が高いもの」、3つ目は「消火の困難性が高いもの」です。また、これらに該当する危険物は、その性質によってさらに第1類から第6類までの6種類に分類されています。
まず、第1類に分類されるのは「酸化性固体」です。酸化性固体はそれ自体では燃えないものの、周囲の可燃物を酸化させることで燃えやすくする性質を持っています。そのため、可燃物と混ぜることで熱、摩擦、衝撃が発生し、激しい爆発を起こす恐れがあるのが特徴です。一方で、第2類に分類されるのは、それ自体に燃える性質がある「可燃性固体」です。文字通り可燃性があるため火が燃え広がりやすく、消火が困難という性質があります。また、第3類には「自然発火性物質および禁水性物質」が分類されています。これらの物質の特徴は、空気や水に触れることで発火、または可燃性のガスを引き起こすという点です。いずれか一方の性質を持つ物質もありますが、両方の性質を合わせ持っている物質も多く存在します。
第4類に分類されるのは「引火性液体」です。名前の通り引火性のある液体で、引火または爆発の危険性のあるものがこれに含まれます。第5類には、分子構造に酸素を含む「自己反応性物質」が分類されます。これらは固体・液体に関わらず、加熱によって酸素を分解し、それほど高温でなくても多量の熱を発生させるのが特徴です。この特性によって、燃焼のリスクがあります。最後に第6類ですが、このグループにはほかの物質を酸化させる「酸化性液体」が分類されます。自分自身は燃えず、ほかの物質を燃えやすくするという点では第1類と似ていますが、異なる点は第1類が固体であったのに対して、第6類は液体であるという点です。
このような危険物が大きく関係する職場には、主に危険物を販売・製造・保管している職場があります。たとえば、危険物を販売している職場として身近なのはガソリンスタンドでしょう。ちなみに、ガソリンスタンドが扱うガソリン、灯油、軽油はすべて第4類の引火性液体です。また、危険物を製造している化学工場や、石油プラントなどの危険物を保管している職場などが、危険物を取り扱う現場に含まれます。
ガソリンに代表される危険物は、取り扱い方法を誤れば燃焼または爆発のリスクがある非常に危険なものです。ガソリンのように日頃から取り扱われているものだけではなく、施設で大量に製造または保管されている場合にも、その扱いには十分注意しなければいけません。こうした危険物を取り扱うには正しい知識が必要になるため、危険物を取り扱う現場では「危険物取扱者」の資格が必要とされています。ガソリンスタンドや化学工場、石油貯蔵タンク、危険物を運搬するタンクローリーなどの施設には、消防法によって必ず危険物取扱者を配置する決まりになっているのです。
危険物取扱者は国家資格です。各都道府県で行われる試験に合格することで、都道府県知事から運転免許証サイズの「危険物取扱者免状」を取得することができます。これによって、晴れて危険物を取り扱うことができる「危険物取扱者」になれるのです。一般的に、資格試験は級によってレベルアップしていくイメージがあるかもしれません。ですが、危険物取扱者の資格の場合はそうした資格試験とは異なり、大きく「甲種(こうしゅ)」「乙種(おつしゅ)」「丙種(へいしゅ)」の3種類にわかれていて、どの資格に合格したかによって与えられる権限も変わってきます。試験自体の内容も変わるため、受験者はこれらのうち、必要な資格を受験する形になるのです。
試験内容は、丙種、乙種、甲種の順で難易度が上がります。ちなみに、甲種は第1類から第6類まで、すべての危険物の取り扱い、定期点検、保安監督ができる資格です。技術職や研究職では、入社にあたって甲種資格が必須であることも珍しくありません。また、工場全体を管理するマネジメント職を目指す人も多く受験しています。これに対して、乙種の場合は第1類から第6類までのうち、合格した類の危険物のみの取り扱い、定期点検、保安監督を行うことができる資格です。乙種の中でも、特に知名度が高いのが「おつよん」とも呼ばれる乙種第4類の資格です。この資格は、ガソリンスタンドやタンクローリーの運転手としての活躍が期待できます。
甲種・乙種の資格所有者が立ち会うことで、無資格者でも危険物を取り扱えます。たとえば、ガソリンスタンドで無資格者である一般人が給油を行えるのは、免状を持った人がモニターなどを通して監督しているからなのです。丙種は、乙種第4類のうち、さらに限られた石油類や動植物油類のみの取り扱いを許可される資格です。ただし、甲種・乙種とは異なり、無資格者に立ち合うことで取り扱わせる力はないので注意しましょう。なお、危険物取扱者は運転免許同様、一度取得すれば永久に効力がある資格ではありません。10年ごとに免状の写真の更新、場合によっては3年ごとの保安講習の受講が義務付けられています。
次に受験資格ですが、乙種・丙種には受験資格がないため、年齢や性別、学歴に関わらず誰でも取得できます。実際、小学生が乙種をすべて取得した例もあるほどです。ただし、甲種の場合はいくつかの条件のうち、最低1つを満たす必要があるので注意しましょう。具体的な条件は、「大学等において、化学に関する学科を修了、あるいは15単位以上を修得している」、「化学に関する専攻で修士、博士の学位を授与されている」、「乙種取得後、2年以上の実務経験がある」「①第1類または第6類、②第2類または第4類、③第3類、④第5類の乙種資格のうち、4種類以上を取得している」です。
危険物取扱者の資格は人気の資格の一つです。もちろん、履歴書に記載することが可能です。業界によって必須のところもあれば、持っているだけで就職や転職が有利になったり、昇進や給与アップが期待できたりする職場もあるでしょう。結果として年収アップも期待できます。また、企業の規模が大きくなればなるほど、危険物を取り扱う業務が増えるため、比例して有資格者の求人数も多くなる傾向があります。このように、危険物取扱者は一度取得すれば長年にわたって活用することができる、将来性のある資格といえます。危険物取扱者の求人は、派遣会社からも募集していますので、初めての人も応募しやすいでしょう。
では、具体的にどのような職種で活躍する資格なのでしょうか。意外に思うかもしれませんが、ドライバーを目指す人にとっても、危険物取扱者は持っていて損のない資格の1つです。たとえば、道路を走っていて、タンクローリーなどに黒地に黄色い文字で「危」と書かれたマークがついているのを見かけたことはありませんか。これは、「危険物を運搬しています」ということを表す目印なのです。危険物を運搬するためには、それを正しく取り扱うための知識が欠かせません。厳密には、運搬するだけであれば資格は不要です。ただし、危険物を積んだり、荷下ろししたりするためには必須になるのです。トラック業界では資格所有者の人材が不足傾向にあるため、資格を持っているだけで重宝される可能性もあります。
ガソリンスタンドのスタッフを目指すことも可能です。正社員に限らず、派遣社員、パートやアルバイトの求人も多いガソリンスタンドですが、そのすべてが有資格者なわけではありません。資格を持っていることで採用面で有利になるほか、時給アップも期待できるでしょう。さらに、石油の製造や管理を行う石油会社においても役立つ資格です。そのほかにも、多くの化学工場や研究所、ビルメンテナンス会社などで有資格者の求人を出しています。また、業務において危険物を取り扱う機会がある消防士を目指す人にとっても、持っていて損のない資格です。知識に基づいて現場で対応できるほか、火災の発生リスクを下げる仕組みづくりにおいても役立つでしょう。このように、危険物取扱者はさまざまな分野・業界において必要とされている資格です。通常の給与に加えて、資格取得手当がつくこともあります。甲種もしくは乙種取得後に一定の実務経験を積むことで、「危険物保安監督者」のようなより責任ある立場への昇格が期待できるというメリットもあります。
危険物取扱者の試験はマークシート方式のみで、実務試験はありません。各科目60%以上の正解率で合格となります。ただし、試験内容や時間、費用などは資格によって異なるので注意しましょう。まず、甲種ですが、こちらの試験時間は2時間30分です。受験費用は6500円(非課税)です。5つの選択肢の中から1つの正解を選びます。試験科目は「危険物に関する法令」が15問、「物理学及び化学」が10問、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」が20問の計45問です。
乙種の場合は、試験時間2時間、受験費用は4500円(非課税)です。甲種と同じく5つの選択肢の中から正解を選びます。試験科目は「危険物に関する法令」が15問、「基礎的な物理学及び基礎的な化学」が10問、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」が10問の計35問です。丙種の場合、試験時間1時間15分、受験費用は3600円(非課税)です。甲種・乙種よりも少ない4つの選択肢の中から正解を選びます。試験科目は「危険物に関する法令」が10問、「燃焼及び消火に関する基礎知識」が5問、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」が10問の計25問です。乙種と丙種は、指定された免状を持っていれば試験の一部が免除になる可能性もあります。
なお、試験日程は都道府県によって異なるので注意が必要です。試験は土日に行われるのが一般的です。前期(4月~9月)、後期(10月~3月)の間でそれぞれ複数回試験を行う地域もあれば、一度しか行われないところもあります。また、たとえば東京のように頻繁に試験が行われる地域では、日によって受験できる資格が限られていることもあるので、あらかじめ確認が必要です。申し込み方法は電子申請・書面申請の2種類がありますが、いずれも試験当日の1カ月前には締め切られてしまうため注意しましょう。
一般社団法人消防試験研究センターによれば、令和1年の甲種の合格率は38%、乙種の平均は50%、丙種は62%でした。甲種に関しては難易度が高いため低い数字になっていますが、乙種に関しては、受験者数が多いために全体の平均が下がっていると考えられます。特に、受験者数が200~300人程度であるほかの試験科目に比べて、乙種第4類は15倍以上の5000人弱が受験しており、合格率も45%と低い数値です。乙種第4類は工業高校や会社などで受験を課せられるケースが多く、受験者数は多いものの、蓋を開けてみれば合格者と不合格者の学習意欲に大きな差があるためでしょう。決して、難易度の高い試験であるという証明ではありません。
なお、いずれの試験も一度退室した場合の再入室は認められていないため、トイレ休憩はないので注意しましょう。ただし、試験開始後35分間が経過した時点で途中退室が認められるため、試験を早く解き終えた場合は制限時間内でも帰ることができます。試験勉強には市販されている問題集が利用できるほか、一般社団法人消防試験研究センターのホームページから過去問をダウンロードできます。問題集で理解を深めることも大切ですが、実際に過去問を解いて問題の傾向や時間配分の感覚を掴む練習もしておきましょう。
危険物を取り扱ううえでは、危険物取扱者の資格が必要になることがあります。取得することで目指せる職業の幅が広がるほか、就職・転職でも有利になる可能性があります。すでに働いている場合でも、昇給や資格手当などによる年収アップ、今後のキャリアアップが期待できるでしょう。危険物取扱者の資格には甲種・乙種・丙種があるため、自分が目指す業界に有利な資格を受験してみましょう。派遣求人もありますので、ぜひご相談、応募してみてください。
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